2010年12月9日木曜日

ベルヌーイの定理

最近、揚力の説明にベルヌーイの定理は間違いなのですかという質問をよく見かける。その答えも、間違いですとか正しいですとか、色々のようだ。
ベルヌーイの定理を使うと飛行機の揚力を説明するのに便利なので物理屋が使っていたわけだが、それを一般の人たちに理解させようというのは難しい。あげくに、それは間違いだったと言い出すヤツが出てきたから、一般の関心ある人たちは混乱に陥ってしまっているようだ。
インターネットでは、間違いも正しいも、ふるいも新しいもごちゃごちゃで、正しい情報を見つけることは難しい。まさにそんな感じだ。
さて、ベルヌーイの定理は正しい。翼の上面と下面を流れる空気の流れの速度が、上面の方が速いとき、その翼は揚力を得る。そのとき、その速度差がどうして出来るのかを説明するのに、間違った説明がされているので混乱するわけだ。流体の速度を計算することは難しい。なんてったって非線形微分方程式だし。おおざっぱなことを言えば、翼の上面がふくらんでいてそっていることから、流れが上面で狭まれて流れが速くなり、下面で広がるので遅くなる。
9年ほど前にケチをつけたやつの話は、作用反作用で説明がつくという話だった。これは流体屋のメイリングリストでも話題になった。そのとき、鈴木先生の説明が回答を与えてくれるという話だった。
流体が翼にぶつかり、その反作用によって翼が揚力を得るのだと理解すべきだと彼は言った。それはそうだ。しかし、流体力学の観点から言えば、流体が物にぶつかったとき、「圧力」としてその反作用は伝わる。従って、ベルヌーイの定理と変わらないことになる。結局、どちらも正しい。一言付け加えるならば翼の上面では流れが翼から離れる方向に流れるため「圧力」は小さくなるので、やはり引き上げられるのだが、この話は力学的な見方では現れない。
物理的描像をはっきりと理解しないで、定理がどうのこうの言っても、本当の理解にはほど遠い。