掲題のブルーバックスを読み終えた。一応物理学科の卒業だが、量子力学は4年生までしか勉強はしていない。メシアとかシッフとか読んでたけど、なんかピンときていなかった。使わないのでその後ほったらかしにしていたが、22年にノーベル物理学賞を取ったのや、量子コンピュータの話題が巷に結構出てくるので気になっていた。そこでちょっと「もつれ」の触りを知りたいと思い、ブルーバックスに手を出した。
アインシュタインの言ったとされる「神はサイコロを振らない」という言葉は有名だが、それは量子力学を理解できなかったからというコンテキストで使われることが多いし、そう思っていた。ところがニュアンスは、まだ疑問点が残っているからコペンハーゲンの人たちの量子力学は未完成だ、と言う事だったようだ。それがまさしく「もつれ」だったのだ。ニールス・ボーアらはEPR論文を無視してちゃんと答えようとしなかったため、アインシュタインらはまだちゃんとしてないと思ったのは無理もない。ただそう思っていたのがアインシュタインらだけでなく、シュレーディンガーやボーム、ド・ブロイもだったところが意外だった。
「もつれ」の思考実験はベルの不等式となって計量できるようになり、実験でそれが破られていることが確認されたので先程のノーベル賞になるわけだが、このことがまさにアインシュタインが確認したかったことのようだ。
実験で確認されればアインシュタインも納得せざるを得なかったと思うが、死んでしまったのでわからない。しかし、量子の世界は奇妙奇天烈。
本を読む途中でエポックメイキングな論文についてググると、ほとんどが無料でPDFが手に入るようになっていたのがうれしい。先のEPR論文も手に入り読むことができる。本によるとこの論文はアインシュタインは執筆には関わっていならしいところが面白い。アインシュタインは他の人なら論文にするようなアイデアも議論はするが論文にはしなかったらしい。またこの頃は英語ができなかったためもあるのか、勝手にポドルスキーとローゼンが論文にしてしまったらしい。ありえないよね、おもしろい。内容はわかりやすかった。
量子力学の世界で昔からこの件には関わるなと言われてきたこのEPR問題が明らかになった今、量子コンピュータや量子通信という形で「商用」化ができそうになったことで、大手を振って研究者が集まってきている。なんか新しいアイデアが浮かんだら同時に世界中で3人はそれに気がついているから速さが鍵と言われる最先端の世界でしのぎを削ってこの問題に取り組んでいる大勢の人がいる。今現在は無理そうだけど、そのうち実用化されるのかなあ。それまで生きてるかなぁ、俺。