このことをちゃんと理解している人がどれだけ少ないか。
導線に電球、いまならLEDか、と電池を繋いで、スイッチを入れたら明かりが付く。一瞬のように速い。これを30万キロメートル x 2の長さの完全導体の電線を用意してスイッチを入れたらどのくらい後に明かりが付くのか。導線の状態にも寄るが大体1秒くらいでまず明かりが灯る。この後の明かりの変化はパーツの条件によってかわる。ある条件ではだんだん明るくなったり、点いたり暗くなったり。パーツのインピーダンスによる。
一体何が電気エネルギーを運んでいるのか、多くの人たちが勘違いをしている。大学で電磁気学をちゃんと学んでいる人間なら間違えるわけはないが、学部でちゃんとマックスウェル方程式を学んでいるのは物理学科の人間くらいか。
電気エネルギーを運んでいるのは、勿論、電磁波である。その実態はポインティング束として定義されている。これ以外にはない。
よく、自由電子が電線の中を瞬間的に押し出されるため、なんて説明を見る。実際、どこかのなんとか袋での答えはこんな物が多い。
金属内の自由電子はその平均自由行程は量子的効果により非常に短い。よって、導電体内部に電位差があっても、大して加速されない。このため、押し出されるみたいな訳の分からない話がまかり通っている。
ここで疑問。導体内部に電位差ってできるのだろうか。理想的な完全導体の場合、導体内部には電位差は存在し得ない。だから現実の良導体も近似的にこれに準じる。だからほとんど生じない。だから電池を電線に繋いだとき、電気力線は+側の電線からほぼ垂直に出て、ー側の電線に垂直に入っていくのが生じて、それが光速度で電球に向かって跳んでいくわけだ。ポインティング束によると、電場と磁場と両方に直交する方向に電磁エネルギーは流れる。この場合、導線に沿った方向になる。
我々が直接いじれる基板上の配線などでは電磁エネルギーが支配的で、電子の運動エネルギーなどは完全に無視できる。ところがLSIの内部などになると話は変わってくる。同じ1Vの電圧でも、せいぜいミリ単位の基板上での電場と、いまや数十ナノメートルとなったLSI内部での電場では、桁にして5桁異なる。つまり電子にかかる力もこれだけ違うわけで、こうなると電子の運動エネルギーもバカにできなくなるので電子の運動方程式を解くわけだ。この状況をごっちゃにしている人たちもいる。
勘違いする人が多いのは、たぶん中学校の理科の教科書のせいだろう。間違ってはいないが誤解が生じるような書き方をしている印象がある。まあ、間違ってても実害はないけど、知りたい人には本当にちゃんと説明するのが難しい問題の一つだよね。
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