2009年7月5日日曜日

アンペールの法則

よく聞く説明に、電流が磁場を作る事を示した法則とある。啓蒙書やWikipedia、専門書には、電線に流れる電流と、その電線の周りに作られる磁場との間の関係を示した法則とある。つまりどちらが先という事に関しては説明していない。キーになるのは定常状態に関しての法則である事。だからどちらが先という事に関して議論する必要が無い。
だが、一般的な電子工学などを学んできた技術者や研究者の間では、まず電流があり、そこから磁場が生成されるというイメージを持つ人が多い。これはフレミングの法則だとか、電池につないだ豆電球が光るのは電流が流れるからなどと、電流主体での説明/イメージがなされるからだと思う。
よく、LSIの動作の研究には、正孔や電子が素子にかかる電場で加速され電流が流れるという話がある。これはここに現れる電場が非常に強いからだ。数Vの電圧でもそれがサブミクロンの間隙にかかればすぐにMV/mになってしまう。だから加速された電子などがあり、それが電流となり、そして次に磁場が生成される。
問題となるのは、電子機器の基板の設計の場合だ。民生機器の場合、電磁的なノイズを低く設定する必要があり、基板からの不必要な電磁波放射を低くしなければならない。
以前は低い周波数で動作する機械ばかりだったので、定常状態での電流と磁場との関係での理解で問題なかった。昨今では動作クロックも高速になり、最早、定常状態とは言えない。こんな中で、電流に着目してからそこからの磁場という理解は真逆であり、解決の糸口は見つからず、混乱に陥るばかりだ。実際、GPS機能やカメラやら多機能になった携帯の初期では誤動作やノイズに悩まされ続けた。現在はモジュールかによって落ち着いてきているようだが、それはLSI屋さんの努力の賜物で、ボード屋さんの力とは言えない。
よく子供たちに使う、電圧と坂道の話は、さも電圧で加速された電流が電線を通って、電球を光らせるかのような誤解を生むばかりなのでやめてほしいものだ。

2009年5月25日月曜日

次世代スパコン,座礁か

先日,NECと日立が次世代スパコンプロジェクトから撤退するとのニュースがあり,また5月14日の朝日の夕刊に,計画中断へと報道されている.
米国ではクレイがDARPAから25,000万ドルで同様のヘテロプロセッサのシステムを受注していて2010年納入となっている.他にもIBMのBlue Gene/Qが控えている.これらのシステムで10PFlops前後の性能を達成する見込みだ.
元々の日本の目標ではクレイと同様に,いろいろなプロセッサをアプリケーションに最適に利用できるということを売りにしていた.確かに場の微分方程式を解くシミュレーションとか,信号処理にはベクトルアレイ式(NEC, Cray, 日立)が適しているし,遠隔作用のシミュレーションなどでは,多数のスカラプロセッサで高速に計算できる.
このプロジェクトからNECと日立が撤退してベクトルプロセッサがなくなると,スカラプロセッサの技術,高密度CPU実装,パッケージング,ボードへの実装技術,ことごとく劣る日本が,米国,特にこれらの技術で抜きん出ているIBMに勝るシステムを作り上げる事ははなはだ疑問だ.
ただ日本と米国と異なる点は,日本がFORTRAN,米国がC++文化となっていてアプリケーションレベルで全く異なるという点だ.この点でお互い差別化が可能かもしれない.しかしながらFORTRANに対応するのと,C++に対応させるのとでは遥かに後者の方がむずかしい.ポインタ演算が多数出てくる後者では,ハードウェアの対応が不可欠だ.歴史的にCrayのシステムと日本のシステムとでC++を走らせると圧倒的にCrayの方が速かった.
日本人としてはどうにかがんばって欲しいが,道は険しい.でも速いシステムが人類に与えられれば恩恵も人類にかえってくる,と考えるのは楽観すぎるか.米国のスパコンアプリのCPU利用時間の多くは原子爆弾のシミュレーションだ等言う話もあるし...

2009年3月20日金曜日

オゾンホール

ふと気になって、フロン全廃から20年経ってどうオゾン層が変化したのか調べてみた。
気象庁の発表によると、大気中のCFC-11, CFC-113の濃度は94年くらいを境に減り始めている。一方CFC-12の方は横ばい状態が続いている。
現象としては依然オゾンホールは大きいままのようであるが、順調に行けば今世紀の中頃までには安定してくるだろうということなので、気を長くして待たなければならないようだ。しかし、一時的にオゾンが減って、地球への太陽エネルギーの入り方が影響を受けており、成層圏の温度が下がってきて、水蒸気量が増えている事が観測されているようだ(2001,AGU)。水というのは地球環境において、非常に重要な役割を持っているので注目しなければならない。

フロンの寿命って20年とか言われていた気がするけど、モントリオールで決まった後も増え続けて今は増加がやっと止まったところ。今後どうなるかはまだまだ分からないようだ。